2017年10月14日土曜日

くも膜下出血再考


Subarachnoid Hemorrhage
N Engl J Med 2017;377:257-66.

Coilingデバイスの改善やColing後の長期成績も出てきており、2017年に入ってくも膜下出血のClinical Practiceがまとめられていた。
くも膜下出血の成因と治療。わかりやすい。

・ 非外傷性くも膜下出血の80%が動脈瘤によるものであり、米国では脳卒中の5-10%がくも膜下出血である
・ 脳動脈瘤破裂で生存した半数が長期の精神神経学的な後遺症を残し、QOLを損なう
・ 脳動脈瘤は人口全体の1-2%の人に見られ、脳動脈瘤の家族歴(特に一親等以内の)やEhlers-Danlos症候群、多発性嚢胞腎などの家族歴に影響を受ける
・ 破裂のリスクとしては高血圧、現在の喫煙、アルコール中毒、交感神経作用薬の使用、7mm以上の脳動脈瘤が知られている
・ 未破裂脳動脈瘤の治療に関しては未だに議論が残るところがある
・ 脳動脈瘤破裂は50代をピークに女性に多く、死亡率は25-50%と報告されている。
・ 10-40%の脳動脈瘤破裂の患者に破裂の2~8週前にsentinel headache 前兆痛がみられる
・ 脳動脈瘤破裂は救急外来を頭痛で受診する1%を占める
・ 症状の3日以内であればCTの感度は100%に近いが5-7日経つと50%に落ちる
・ CTで陰性であった場合の腰椎穿刺は検査前確率が低く、穿刺による出血との見分けが困難であるため必要ではないかもしれない
・ CTAは2mmほどの動脈瘤は信頼して探知できる
・ 再破裂は24時間以内に4-14%ほどである
・ あるRCTでは抗線溶薬の使用でリラプチャーは11%に対して2%まで低下したという報告があるが、総アウトカムを改善せず、DVTや脳梗塞のリスクもある
・ 痙攣は20%以内の脳動脈瘤破裂の患者に認められ、それ自体が再破裂のリスクとなるが、抗けいれん薬の予防的投与の効果はまだわかっていない
・ 開頭手術と血管内治療のRCTは2つあり、双方ともに1年時点での機能的予後は血管内治療が優るという結果に至っている。多施設共同RCTでは7年間のフォローで死亡率、痙攣リスクは血管内治療が優るという結果を出しているが、単施設RCTでは3年と6年時点での機能的予後に有意差は認めなかった
・ 頭蓋内圧亢進や血腫による巣症状を認める場合アンギオグラフィーで描出が困難な例やバイパスが必要な例は開頭手術を選ぶべきだし、40歳以下で神経学的に良好な前方循環系の動脈瘤患者では再出血リスクが低いために開頭手術を選ぶべきである
・ Vasospasmは出血後3-4日後に始まり、7-10日後をピークにし、14-21日後には終焉を迎える。Caチャネルブロッカーのニモジピンは唯一脳梗塞リスクを改善し神経学的予後を改善することが明らかとなっている
・ 脳循環血液量とヘモグロビン値の管理が遅発性脳梗塞のリスクを下げることができるが、予防的輸液負荷は薦められない
・ 経頭蓋ドブラーは広く使われているがその有用性に関しては未だに議論が残る。
・ 遅発性脳梗塞が疑われた場合は、Double”H”療法(輸液負荷、高血圧)が推奨される。主要な脳動脈のspasmが認められる場合は選択的血管内拡張療法も考慮される
・ 水頭症は15-85%に認められVPシャントや腰椎ドレナージは有効だが、腰椎ドレナージは閉塞性水頭症と脳実質内血腫に対しては禁忌である

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攣縮期間の管理プロトコールも各施設で様々であり、さらなるエビデンス蓄積で徐々に治療が変わっていくだろう。