2020年5月9日土曜日

HITTは本当に意味があるか

脳挫傷を伴う急性硬膜下血腫の治療 -極小開頭・血腫洗浄除去療法の再評価-

日救急医会誌 1994; 5: 15-25

ASDHの開頭術に前だって、穿頭をおく手術をHITTと呼び、ガイドラインにも書いてある
皆が知っているので国際標準なのかと思いきやHematoma irrigation with trephination therapy, HITTはもともと東大の有賀先生により発表され、pubmedでも数件しか表示されない
所感としてはHITTを行ったところで予後改善しにくい印象であり、データでは実際のところどうなっているか調べてみた
HITT療法
HITT療法
ASDH120例に対する単施設後方視的研究
開頭 w/ HITT vs. 開頭の比較
結果としては有意差なし
HITT群と開頭群の比較
HITT群と開頭群の比較
また、頭部外傷データバンク576例中、穿頭が行われたASDH 90例の解析では、穿頭だけ行っている症例が53例もあった
死亡率も高く、穿頭だけしたところで開頭まで持ち込めなかった例なのだろうか
頭部外傷データバンクでのHITTの実際
頭部外傷データバンクでのHITTの実際

HITT自体による予後改善のエビデンスはない
CSDH成分が多いのであれば穿頭で十分かもしれないが、硬い血腫成分を穿頭で十分に除去できるとは思えないし、手術室についてからHITTする意味もない

HITTを行う条件として考えられるのは、
すぐに手術室に入れない状況下で、CSDHの成分が多い場合、もしくはあらゆる手段で救命すべき患者に限られるのではないか。
そうでなければ、HITTは術者の焦る気持ちを和らげる意味合いしかならないのかもしれない