2020年5月11日月曜日

イーロンマスクの論文

An integrated brain-machine interface platform with thousands of channels

Elon Musk & Neuralink
doi: https://doi.org/10.1101/703801

随分前のものになってしまったが、一時期話題となったイーロンマスクの(査読のない)論文を読んでみた
イーロンマスとニューラリンクが開発した脳埋め込み型のブレインマシンインターフェースについての内容
皮膚表面から検出するEEG, MRI, MEGは精度が低く、脳の電気活動を知るには脳への直接穿刺が望ましい
一般的には侵襲が大きいが、新たな技術で乗り越えようとしている
以下4つの技術開発を行っているとのこと。すごい

1. 極小電極の開発
2. 埋め込みロボットの開発
3. 膨大な情報統合システムの開発
4. 集めたデータの解釈システムの開発

埋め込みロボットは脳血管を認識して避けるようだ。
極小電極埋め込みロボット
極小電極埋め込みロボット
極小電極の埋め込みの様子
極小電極の埋め込みの様子

電極を埋め込まれたラット
電極を埋め込まれたラット
論文の内容としては工学的な内容がほとんどで医学的内容はまだない
デバイスが開発されたら自ずとBMIに関する医学的見地は高まっていくということなのだろうか

開頭だけであれば脳外科医が日常的にやっており、比較的危険性は少ないが、
脳に電極を刺すというのはいくら極小であっても侵襲性が高い印象である
血管損傷による脳梗塞、てんかん発作、感染などのリスクは致命的になりうる

高次脳機能自体はEEGでも十分にわかっていない領域であり、
現状すぐに役立つとすれば運動野・感覚野の領域だろうか
(一般的に知られているほど、脳と機能が直結している領域は驚くほど小さいのである)
健常者を対象にすればリスクの可能性があるし、患者を対象にしたとしても機能を失った脳細胞は緩徐に消失していくわけだから発症直後に行うということなのだろうか

否定の材料は驚くほどに出てくるが、それを乗り越えてこその新技術なのだろう
あらゆる壁を乗り越えて実用化まで進んで欲しい