2018年10月16日火曜日

血栓回収療法 発症後24時間以内への適応

Thrombectomy 6 to 24 Hours after Stroke with a Mismatch between Deficit and Infarct
N Engl J Med 2018; 378:11-21

血栓回収適応拡大の根拠になったDAWN trial

P: IC / MCA中枢閉塞で6-24h経過もDWI mismatchを満たす患者
(Group A: 80歳以上でNIHSS10点以上かつ梗塞巣が21mL未満
 Group B: 80歳より若く、NIHSS10点以上かつ梗塞巣が31mL未満
 Group C: 80歳より若く、NIHSS20点以上かつ梗塞巣が31-51mL以下)
 Inclusion; 18歳以上、LKW6-24h、mRS0-1
 Exclusion; 脳出血、MCA領域の1/3以上の梗塞
I: 血栓回収+標準療法
C: 標準療法
O: 90日時点のutility-weighted modified Rankin scale, mRSで0-2郡の割合
最終未発症からランダム化まで約12時間
各群間で差はなし

ベイズ推定による結果ですが、Outcomeは全て差があり
(血栓回収しているわけだから当然かもしれませんが)

mRSも改善

subgroup解析ではGroupCと目撃なしの発症では差がありません
Group Cに関しては梗塞巣も広く、他の郡と比較するとbenefitは安定しないようです

今回集めた症例の中では血栓回収による死亡リスクの増大なしも、こちらをprimaryとしたstudyではないので現状なんとも言えまません。
現実と比較すると90日死亡率が異様に高い様子ですが・・・

<Comment>
・RAPIDあってのstudy。欧米でもRAPIDの代替システムはできており、日本は取り残されている状況。今後研究目的で使用可能になるようではありますが。
・日本の臨床現場ではNIHSSと血管内治療医の画像評価で問題なくできている印象ではありますが、梗塞巣の定量的評価なしに今後の研究は進まないのではないでしょうか
・形態学的評価が進んできましたが、今後、残存高次脳機能を定量的評価を行っていくようになるのでしょうか。超高齢者に限って言えば"若さ"に明らかな差が出てきており、これからの課題でしょうか

2018年10月15日月曜日

TTF 脳腫瘍に対する電磁波治療の成績

Effect of Tumor-Treating Fields Plus Maintenance Temozolomide vs Maintenance Temozolomide Alone on Survival in Patients With Glioblastoma A Randomized Clinical Trial
JAMA. 2017 Dec 19;318(23):2306-2316.

電磁波で腫瘍を治療するオプチューンのRCT

P: グリオブラストーマ患者
I: テモゾロミド+オプチューン郡
C: テモゾロミド単独群
O: Progression-freesurvival 
(Secondary outcomeがOverall survival)

終末期に丸坊主にして電極をはるという事が一番のネック

約700人を2:1でランダム化割付

MGMT mutationも含め、baselineはほぼ同様

Progression-free survivalとOverall survival共にITT解析で有意差あり
Overall survivalの中央値16ヶ月→20ヶ月と4ヶ月の延長

年齢、MGMT mutation別に分けても有意差あり

副作用はそうはないけれども、見た目がやはり問題ではないか

<Comment>
・治療効果はあるとはいえ中央値4ヶ月の延長で見た目の問題を考慮すると広まらないのも無理はない
・一方で別のモダリティによる治療であり、今後、見た目の問題が解決していけば(より小さい電極や、摘出時に埋込み型のデバイス)日本でも使用されていく可能性は十分あるのではないか
・駄目だ駄目だと批判していると、気がついた頃にはついていけなくなってしまうので、時々キャッチアップしていきたいと思います。

脳梗塞に対するDAPT

Clopidogrel and Aspirin in Acute Ischemic Stroke and High-Risk TIA
N Engl J Med. 2018 Jul 19;379(3):215-225.

・これまで脳梗塞に対するDAPTの効果は中国でのstudyで示されたが、国際RCTでは示されていなかった
・今回、世界中269箇所 の参加で検証した

P: 脳梗塞もしくはTIAを発症した患者
I: クロピドグレル(600mg→75mg)+アスピリン(50-325mg)
C: アスピリン(施設による)
O: 90日の時点での主要梗塞イベント(脳梗塞、心筋梗塞、梗塞性イベントによる死亡)

各群約2500名ずつの参加

国際的〜といいつつ8割がアメリカ
TIAと脳梗塞は半数ずつ
郡間にほぼ差はなし

90日時点でDAPT郡の方が脳梗塞リスクを低下させる

カプランマイヤーでみても発症率抑制

脳梗塞リスクは低下させるが、当然出血リスクは高まる
日本ではガイドライン上、脳梗塞急性期のDAPTは認められていはいますが、アジア人の出血リスクの高さや、それ以上に病型分類に基づいた診療を考えるとなかなか実臨床に活かすのは難しそうです

2018年10月14日日曜日

血栓回収療法 CAPTIVEテクニック

Continuous aspiration prior to intracranial vascular embolectomy (CAPTIVE): a technique which improves outcomes
J NeuroIntervent Surg 2017;9:1154–1159.

血栓回収の際に、予めペナンブラで吸引を開始した方が成績が良いのではないかという報告
P: M1閉塞
I: ステント展開の前に吸引開始郡
C: 従来の吸引タイミング郡
O: 術後のNIHSS, 90日後のmRS, TICI

CAPTIVEテクニック
吸引した状態でstentを展開し引くことでcaptiveした状態で回収できる

従来の方法ではACEに入りきらない血栓が末梢に飛んでしまう

患者背景。traditional郡の方がtPA投与が多い
再開通までの時間はCAPTIVEの方が圧倒的に早い

Outcome: NIHSS, mRSは全期間において良好な成績

・再開通までの時間は31分 vs 14分
・TICI 2c/3の再開通は40% vs 79.5%
・退院時NIHSSの中央値は10 vs 3

<Comment>
・CAPTIVEテクニックの方が圧倒的に成績がいいが、果たして吸引のタイミングだけでこれほどまでに違うものなのか。術者の比較がなく、術者による影響が大きいのではないか(新しいテクニックだからきっと熟練した医師がやっているに違いない)とlimitationはあるものの、論理的にCAPTIVEテクニックの方が良さそうで合併症も短時間であれば考えにくい
・血栓回収の術式に関してはある程度頭打ちの印象。今後はより多くの施設での普及だ目下の問題か

Glioblastomaへのテモゾロミド+40Gy放射線療法

Short course radiation plus temozolomide in elderly patients with glioblastoma
N Engl J Med. 2017 Mar 16;376(11):1027-1037.

・テモゾロミド+放射線療法(60Gy, 6week)による予後延長は明らかになっているが、実際に行われている、高齢者に対するより短期の放射線療法の効果は明らかになっていない

P: GBM >65
I: RTX 40Gy+TMZ
C: RTX 40Gy alone
O: Overall survival

280ずつがRCTに組み込まれた

約7割がステロイド内服、外科的摘出後
MGMT mutationは半数ほど、日本人は3%のみ

当然テモゾロミド追加郡の方が副作用が多い

Overall survival、Progression free survival共に改善あり
それでも数ヶ月程度の延長

<Comment>
・現在の高齢者GBMの標準治療のEvidenceが示された
・さらに低放射線量の34Gy+TMZ, 25Gy+TMZの上乗せ効果についてのRCTはまだない
・ガンマナイフの効果はどうなんでしょうか

血管の機能的解剖のサイト

http://nnac.umin.jp/nnac/huinitsuite.html

脳血管疾患を扱うのであれば、知っていたい脳血管の発生と血管奇形、ニッチな疾患
かなり詳しくまとまっているサイトです。大変勉強になります。

DOACの頭蓋内出血リスク

Association of Intracranial Hemorrhage Risk With Non–Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulant Use vs Aspirin Use: A Systematic Review and Meta-Analysis
JAMA Neurol. 2018 Aug 13. [Epub ahead of print]

・DOAC vs ASAの頭蓋内出血リスク評価
・過去にDOACとASAを比較したRCT5本のSystematic review

Inclusion & exclusion criteriaを満たした5本のRCT

結論:15-20mgのリバロキサバンは出血リスクが高まる(OR3.31; 95%CI 1.42-7.72) 
10mgのリバロキサバン、5mgのアピキサバンは有意差なし

各研究の質の検討:どれもまずまず

各研究ごとの頭蓋内出血リスクの比較
ほぼNAVIGATE ESUSが結果を引っ張っている

各試験
AVERROES: warfarinが使えないAf患者へのアピキサバンとアスピリンの比較試験
COMPASS: 抗凝固薬を使用している患者の心血管アウトカムの評価試験
EINSTEIN CHOICE: 減量エイバロキ差版の再発性症候性VTEの長期予防効果の試験
NAVIGATE ESUS: ESUSに対する脳梗塞二次予防のリバロキサバンとアスピリンの比較試験

<Comment>
・明らかにNAVIGATE ESUSでDOACの頭蓋内出血リスクが高く出てしまっている。各試験の患者背景の分析が必要ではあるが、ESUSの二次予防効果が薄かったり、出血リスクが高すぎたりNAVIGATE ESUSの結果は疑問が残る。
・本研究の結果は結果として、DOACとASAの脳梗塞予防効果と踏まえて検討が必要。その上でリスクが高いのであればDOACよりASAだが、日本では心原性にASAを使うことは考えにくいのでは・・・?


慢性硬膜下血腫に対するスタチンの効果

Safety and Efficacy of Atorvastatin for Chronic Subdural Hematoma in Chinese Patients
A Randomized ClinicalTrial
JAMA Neurol. 2018 Jul 30. [Epub ahead of print]


・慢性硬膜下血腫には日本では五苓散が一般的に使用されているが、諸外国では使用されていない
・この論文の筆者が過去に行ってきた基礎研究で、スタチンが①血管壁の炎症を抑制し、②血管壁の修復を促進することが明らかになり、臨床での実用性に関して検証したもの

P: 18-90歳の症候性軽症CSDH
I: アトルバスタチン20mg 8週間
C: プラセボ 8週間
O: 8週間時点の血腫量の変化
(Secondary outcomeは4, 12, 24週時点での血腫量やGCS, ADL, Barthel Index, GOSなど)

計200名が参加

2郡間のbaselineに大きな差は認めない

4週間、8週間時点で血腫量は減少を認める

subgroup解析でリオペも減少

・安全性に関しても大した副作用はなし
・subgroup解析で高齢者、血腫量が多い方がより血腫量の減少を認めた

<Comment>
・中国でのRCTだがよくデザインされていることもありJAMAで採択
・スタチンの抗炎症作用は過去にも報告されており、脳梗塞急性期使用に関して議論がある所
・保険適応が問題が大した副作用もなく、病名がつけれれば使ってみるも価値あるか
・一方、日本では五苓散がfirst choiseであり、上乗せ効果があるかどうかは今後の研究が必要