2020年4月30日木曜日

頭部解剖3Dモデル

頭部解剖3Dモデルを作成しました。
https://nsurgery.github.io/neuroAR/
iPhoneであればAR機能で表示できます。
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動作環境
・iOS12以上
・Safariのアプリで見てください
・iPhone 6S以上の端末
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頭部解剖3Dモデル
頭蓋骨を机の上に置いて観察したり
頭部解剖3Dモデル
3DCGとしてくるくる回したりできます
頭部解剖3Dモデル
外頸系モデル
頭部解剖3Dモデル
内頸系、頭蓋骨モデル
頭部解剖3Dモデル
大脳、小脳モデル
頭部解剖3Dモデル
静脈系、脳室モデル
おもちゃがてら使ってみてください

2020年4月29日水曜日

ギリアデルの長期成績

Gliadel wafer in initial surgery for malignant glioma: long-term follow-up of a multicenter controlled trial

Acta Neurochir (Wien) (2006) 148: 269–275

少し古い文献ではありますが、ギリアデルについてのkey paperということで読んでみました。
ギリアデル、要はカルムスチン(BCNU)。摘出腔に敷き詰める形で置く円板状の薬剤。
脳腫瘍診療ガイドラインでも初発・再発膠芽腫に対して推奨グレードC1となっています。
過去に1年後の報告が出ましたが、今回は3年フォローでの結果です。

KPS60以上の片側悪性膠芽腫 240名のグローバル二重盲検RCT。
研究デザインは、手術 + ギリアデル + 放射線 vs. 手術 + placebo + 放射線。

ギリアデルの脳内留置
ギリアデルの脳内留置
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/4219700X1020_2_09/


ギリアデルの研究における、病理診断
最終病理診断:Glibraだけではない

ギリアデル群の方が長期生存する
ITT解析ではギリアデル群の方が長期生存する
最終診断がGBMのみに絞ったsub group解析では差なし
最終診断がGBMのみに絞ったsub group解析では差なし
・GBM単独のサブグループ解析では優位差が出ていないが、実臨床はITTの環境であるため、実際には有用性を示す結果であったと言えるでしょう。
・再手術、手術時の摘出率や全身化学療法などのバイアスによって影響を受けている可能性があります。ただし、先行研究でも一貫して有用性を示す結果であったことからギリアデルの効果自体はある、という認識でよいのでしょう。
・依然、GBMの予後は極めて厳しく化学療法を行っても数ヶ月程度の延長にしかなりませんが、将来のよりよい生存期間の延長、QOLの向上のための通り道なのでしょう。

2020年4月28日火曜日

ベレキシブル:再発性PCNSLに対する新薬

ベレキシブルが発売されました。
まだ市場には出回っていませんが、内服薬ですし今後広く使われていきそうです。
エビデンスに関してさらってみました。

Phase1/2のみでの承認となっています。
最近はPhase3も飛ばしているんですね、すごい。

有効性試験の研究内容
他の抗がん剤と同様、KPS70以上をターゲットにしています

ベレキシブルの主要評価項目
50-60%ほどには奏功
ベレキシブルのPFSとOS
6ヶ月時点で8割が生存
今後PhaseⅢの結果が出てきますが、再発例に対する次の1手になりそうです。
副作用もmildであればいいのですが、実際はどうなのでしょう


2020年4月27日月曜日

血管内治療用クロックス

正式には血管内治療用に開発されたものではないですが、

・血液がついてもすぐふける
・血液が滴っても染み込まない(穴がない)
・比較的安価で買い替えが効く
ものを探していたらクロックスにありました。

クロックス] サンダル スペシャリスト 2.0

クロックス サンダル スペシャリスト 2.0

Amazon ¥3,553
クロックスの中でもスペシャリストシリーズは血液がついても拭きやすい仕様になってます
さらにスペシャリスト2.0では周囲の穴もなくなって、血液が靴下に染み込むこともありません
大変気に入っています。
血管内治療にいかがでしょう

2020年4月26日日曜日

日本脳卒中学会 COVID-19 対応 脳卒中プロトコル

COVID-19 対応 脳卒中プロトコル

(日本脳卒中学会版 Protected Code Stroke : JSS-PCS)

脳卒中学会からもCOVID対応のガイドラインが出ていました。
全28ページにわたりClinical questionに対して具体的な回答がある。
https://www.jsts.gr.jp/news/pdf/jss_pcs_ver1_2.pdf

COVID-19に関する日本脳卒中学会・日本循環器学会 共同声明
COVID-19に関する日本脳卒中学会・日本循環器学会 共同声明

脳卒中プロトコル CQ一覧
脳卒中プロトコル CQ一覧

感染対策に関しては他のガイドラインと同様でした。
新規の情報としては以下でしょうか。

・中国のデータによると COVID-19 の確定患者の 29%は医療従事者であり、12%は入院患者、つま り 41%が院内感染である
 ・アンギオ室は通常陽圧換気である。給気と排気を調整することである程度陰圧換気とすることが 可能な場合もあるが、6 回/時以上の換気を達成することは困難なことが多い。事前に換気状態を 確認しておき、治療後は空調設備の能力に応じて事前に想定される換気時間に応じて換気を行 う。
機械的血栓回収療法後の頭部 CT 撮影は、cone beam CT が施行できず、急激な神経症候の悪化を認 め出血性変化が否定できない場合にのみ許容される

2020年4月25日土曜日

神経学会からのコロナ対策マニュアル

脳神経内科当直医のための、新型コロナ感染を配慮した意識障害等の神経症候を呈する患者への救急外来対応マニュアル

https://www.neurology-jp.org/covid/pdf/20200415_01.pdf

神経学会からも2020/4/15付けで出ていました。
神経学会からのコロナ対策マニュアル
神経学会からのコロナ対策マニュアル

脳神経内科当直医のための、新型コロナ感染を配慮した意識障害等の神経症候を呈する患者への救急外来対応マニュアル
脳神経内科当直医のための、新型コロナ感染を配慮した
意識障害等の神経症候を呈する患者への救急外来対応マニュアル
ただ、内容としては
意識障害がある患者は問診もできないからコロナだと思って対応しろ
程度の内容でした。
現在ではどこの病院でも救急外来、新規入院患者はすべてCOVID-19疑いとして対応されているはずなので、新しく何かを変える必要はありませんでした。

2020年4月24日金曜日

新薬一覧

新薬一覧がPMDAに記載されている
脳神経外科領域の新薬の情報は入ってくるが、
他領域の新薬も一通り目を通しておきたい
あと、M3のMR登録にも役立ちそう

2020年4月23日木曜日

内頸静脈拡張症


Unilateral internal jugular vein phlebectasia in an adult: Management and one year follow-up

SAGE Open Med Case Rep. 2019; 7: 2050313X19836351.

Internal jugular phlebectasia: A systematic review

Surgical Neurology International • 2019 • 10(106)

右の頸部腫脹、嚥下時違和感を主訴に来院した成人男性がいて、
内頸静脈拡張症の診断となったので、画像のあるcase reportとsystematic reviewを調べて見た
内頸静脈の拡張
内頸静脈の拡張


CTA 矢状断 内頸静脈拡張
CTA 矢状断 内頸静脈拡張

CTA 軸位断 内頸静脈拡張
CTA 軸位断 内頸静脈拡張

Echo 内頸静脈拡張
Echo 内頸静脈拡張


特徴

・小児発症が多い(18歳未満が83.4%)
・症状:首の腫瘤(26.8%)、首の圧痛、首の痛み、喀血、胸部不快感、右肩の脱力感など。
・外傷または手術に関連した症例は4.1%
・73.9%が右側で18.5%が左側、7.6%が両側
・成人では外科的切除による合併症が11.4%、小児では2%に外科的合併症
・病理学的には弾性繊維の欠落を認め、先天性が疑われている
・症候性の場合は外科的に結紮・摘出を行う
・拡張した静脈内に血栓形成を認める場合もある

両側であれば心疾患等も鑑別にあがるが、片側の場合は鑑別としてあげておきたい

2020年4月22日水曜日

てんかん薬の中止基準は?

抗てんかん薬のやめどき

てんかんの診断と抗てんかん薬の開始は簡単なものの、"やめどき"の判断には毎回困る。
継続していれば全身痙攣による事故などを予防することはできるが、一方その分お金はかかり続ける。
副作用がなければ生涯内服をオススメしたいところだが、そういかない場合もある。

ガイドラインでの推奨

2010年のガイドラインでは2年を目安との記載があったが、2018年のガイドラインでは2年の文言は消えている。
てんかんガイドライン2010年 治療終結の目安
てんかんガイドライン2010年 治療終結の目安
てんかんガイドライン2018年 治療終結の目安
てんかんガイドライン2018年 治療終結の目安

てんかん終了における問題としては

・車の運転中の発作による事故
・水場での発作による事故
・発作による職業喪失(起きるべきではないが、現実的には起きている)
など社会的損失が大きい

また、2年以上発作の無い人を対象にしたRCTではAEDを終了した群では59%が寛解維持と、AEDの終了を積極的に勧めることはできない結果であった。
Randomised study of antiepileptic drug withdrawal in patients in remission. Medical Research Council Antiepileptic Drug Withdrawal Study Group.
Lancet. 1991 May 18;337(8751):1175-80.

減量速度

に関しても過去にエビデンスとなる論文の報告はない
ただし、多くの研究が3-12ヶ月で漸減している

成人てんかんの薬物治療終結のガイドライン(案)

というのがネット上にあった。
ここに記載のある「提供すべき情報」が大変参考になる
抗てんかん薬断薬前に提供すべき情報
抗てんかん薬断薬前に提供すべき情報
最終的な判断は本人・家族になる
医師の役割としては十分な情報提供を行うことであろう


具体的なてんかん薬の断薬方法

としては以下になるだろう
・2年以上寛解しており、本人が断薬の希望がある
・十分な情報提供を行う
・数ヶ月ごとに漸減する(過去の研究では3-12ヶ月で漸減している)

2020年4月21日火曜日

脳神経外科領域の引用数の多い100の論文


Assessing the Relevancy of Highly Cited Works in Neurosurgery. Part I: The 100 Most Relevant Papers in Neurosurgical Journals

WORLD NEUROSURGERY 104: 927-938, AUGUST 2017

脳神経外科領域の引用数の多い100の論文を集めた論文です
Key paperが多く、一通り目を通しておきたいところです

脳神経外科領域の引用数の多い100の論文
その1
脳神経外科領域の引用数の多い100の論文
その2
脳神経外科領域の引用数の多い100の論文
その3
脳神経外科領域の引用数の多い100の論文
その4

脳神経外科領域の引用数の多い100の論文
その5

脳神経外科領域の引用数の多い100の論文
その6

2020年4月20日月曜日

脳血管内治療後の多発性異物肉芽腫

Delayed Complications Due to Polymer Coating Embolism after Endovascular Treatment

NMC Case Report Journal 2020; 7: 5–10

脳血管内治療後の多発性異物肉芽腫
いまだに報告数としては少ないが、合併症として注意が必要である

特徴

・術後時間が経ってから、複数の浮腫を伴う病変の増強がみられる
・発生率は0.1%
・アレルギー素因のある人に起きることが多い
・カテーテルの親水性ポリマーが原因と考えられている
・ステロイドが著効するが投与量は確立していない
・予防方法として考えられるのは、カテーテル同士の摩擦によりポリマーが剥がれている可能性があり、複数のカテーテルが交差しないようにすること

脳血管内治療後の多発性異物肉芽腫の経時変化
脳血管内治療後の多発性異物肉芽腫の経時変化
脳血管内治療後の多発性異物肉芽腫の病理像
脳血管内治療後の多発性異物肉芽腫の病理像

病理像

・周囲のgliosis
・血管周囲の慢性炎症を伴うリンパ球の集まり
・膜状の異物(矢印)を伴う多核巨細胞による肉芽腫性炎症


数をこなせば必ず出会う疾患
病理を取らずとも多発浮腫性病変によるステロイドで診断的治療を行なっても良いのではないか、とも思える

2020年4月19日日曜日

COVID-19下での中国・イタリア・アメリカでの血管内治療

SNIS Special Webinar: Neurointerventional Guidance for COVID-19
https://www.snisonline.org/meetings/covid19webinar/

COVID-19下での中国・イタリア・アメリカでの血管内治療のウェブセミナー
各国のリアルの現状、血管内治療の対応がわかる

中国から

武漢を中心にコロナは広まっている
武漢を中心にコロナは広まっている
コロナ前後の患者数等の比較
コロナ前後の患者数等の比較

イタリアから


手術に関わる人数を減らしている
手術に関わる人数を減らしている
イタリアでの血管内治療の様子
イタリアでの血管内治療の様子
一応、血管内治療やSAHもやっている
一応、血管内治療やSAHもやっている
臨床現場を如実に表している「患者数は減ったが一つ一つが大変になった」
臨床現場を如実に表している「患者数は減ったが一つ一つが大変になった」

アメリカから

COVID用仮設診療所
COVID用仮設診療所
"挿管したからといって安全な訳ではない"
"挿管したからといって安全な訳ではない"

アンギオ台でCTを撮影して、できるだけ移動を省略している
アンギオ台でCTを撮影して、できるだけ移動を省略している

感想
・各国の対応にそれほど差異はないと感じた
・ただ、自分たちの対応が各国と似ており少なくとも間違っていないという安心感が得られた
・臨床現場で使えるTipsがところどころにあり参考になった

2020年4月18日土曜日

COVID-19における中枢神経症状

Neurologic Manifestations of Hospitalized Patients With Coronavirus Disease 2019 in Wuhan, China JAMA Neurol. 

2020 Apr 10. doi: 10.1001/jamaneurol.2020.1127. [Epub ahead of print]

COVID-19の神経学的所見のまとめ論文
2020/1/16-2/19の連続214例のケースシリーズ
平均年齢、52.7歳、男性40%の結果、36.4%が神経学的症状を示した
重症の場合は急性脳血管疾患(5 [5.7%] vs 1 [0.8%])、意識障害(13 [14.8%] vs 3 [2.4%])、および骨格筋損傷(17 [19.3%] vs 6 [4.8%])が多かった
脳梗塞が4人、脳出血が1人(呼吸不全で死亡)、痙攣発作が1人

中枢神経症状は、めまい(36 [16.8%])と頭痛(28 [13.1%])
末梢神経症状は、味覚障害(12 [5.6%])と嗅覚障害(11 [5.1%])

COVID-19の患者背景
COVID-19の患者背景①

COVID-19の患者背景
COVID-19の患者背景②

重症化のリスク

・高齢
・女性
・基礎疾患あり(特に高血圧)
・症状が咳嗽・発熱・食思不振、意識障害

COVID-19の血液検査の特徴
COVID-19の血液検査の特徴

血液検査上の重症化リスク

・好中球の上昇
・リンパ球の低下
・CRPの上昇
・D-dimerの上昇
・CKの上昇
・乳酸値の上昇
・腎機能低下

重症化と中枢神経症状のリスク
重症化と中枢神経症状の比較
血小板低下が中枢神経症状のリスク

神経学的所見といいつつも意識障害も含めておりかなり広い症状を含んでしまっている
COVID-19の重症化の本態はARDS, DICと言われており、それに合致する血液検査所見である。

脳神経外科として気をつけるべきは
・めまい、頭痛、味覚障害、嗅覚障害などの外来診療のとき
・重症患者における脳出血、痙攣発作対応
ぐらいであろうか

2020年4月17日金曜日

慢性皮膜化脳内血腫

Chronic Encapsulated Intracerebral Hematoma: Endoscopic Removal as Minimally Invasive Surgery for a Patient with Alcoholic Cirrhosis

NMC Case Report Journal 2017; 4: 51–53

脳出血後慢性期に血腫が再貯留する現象を慢性皮膜化脳内血腫 Chronic encapsulated intracerebral hematoma (CEIH)もしくは慢性脳内血腫 Chronic intracerebral hematoma (CIH)と言うらしい。
まれな病態で報告も数少ない。

慢性皮膜化脳内血腫の画像所見
慢性皮膜化脳内血腫の画像所見
他の日本語の文献をまとめると以下
・1978年にYashonによって初めて報告された
・発生頻度は0.04%ほど
・T2*では皮膜のみ低信号で描出
・内部は慢性脳内血腫のように漿液性血性成分
・外科的に皮膜の摘出が推奨されたが、内視鏡下で皮膜を摘出せずとも経過良好な場合もある
・原因としては血管奇形が関与している可能性や軟膜の繊維芽細胞の活性化の可能性、慢性硬膜下血腫と同様の機序などが論じられている

2020年4月16日木曜日

気管支喘息に対する造影剤使用について

造影剤の 適正使用推進ガイド FAQ 第3回 造影剤添付文書の 「原則禁忌」について考える

臨床画像 Vol.23, No.3, 2007
https://radiology.bayer.jp/properuse/cm_faq/

脳神経外科では造影CTによる血管評価を頻繁に行う。
困るのが、気管支喘息の既往があるとき。
当然、病院ごとにルールが定められているが今回改めて文献を当たってみた。
参考は日本の文献だがよくまとまっている

気管支喘息患者における造影剤使用時の副作用オッズ比
気管支喘息の患者の副作用比率は圧倒的に多い

気管支喘息がactiveなとき

基本的に禁忌

気管支喘息の症状をコントロー ルされているとき

RCR(The Royal College of Radiologists) のガイドラインでは造影検査によるメリットが高いと判断された場 合には実施可能

 小児喘息を含め気管支喘息の既往歴のある患者

基本的に実施可能
小児喘息のガイドラインでは無治療,無症状の状態が5年以上持続している場合を治癒としている
気管支喘息に対する造影剤使用に関する海外のガイドライン
気管支喘息に対する造影剤使用に関する海外のガイドライン

他諸外国のガイドラインACR:American College of Radiology, ESUR:European Society of Urogenital Radiology,RCR:The Royal College of Radiologistsにも絶対禁忌の記載はない

前処置

造影前にステロイドの点滴静注 (ソル・メドロール 125~250mg)を行うこともある。


結論としてはリスクがある場合はステロイド使用と十分なICでせざるを得ないといったところだろうか。
Activeな気管支喘息がある場合はMRIでやる他ないか