2020年5月31日日曜日

Pubmed APIについて

PubmedのAPIについて

pubmedをよく使っていると、右下にAPIとあるのに気づきます
pubmedのホーム画面
pubmedのホーム画面
実際にはNIHのデータベースの検索であるE-utiliesという機能の中で
pubmedを指定して使うことになるのですが、
いつも使っている検索だけでなく、様々な検索をすることができます。
(実施にすぐに臨床で使うようなデータは出てきませんが、お楽しみには使えます)

使い方は、取説を読むと比較的簡単で、urlに検索条件を加えることで、検索結果が返ってきます
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK25500/

例:2008年にScienceに掲載された乳がんに関する記事のPubMed ID(PMID)を取得する

などです。
いつもの検索画面と異なり、大量の検索(検索条件に合う1000件のpubmedIDの取得)などができるので、データ解析などに有用です。

使い方次第では面白い検索ができそうです。

2020年5月30日土曜日

脳神経外科教育セミナー一覧

2020年度の教育セミナーの一覧です

今年はコロナの影響もありWeb開催が予想されます
専門医取得には必ず参加するといっても過言ではない教育セミナー
移動費、宿泊費だけで高くついてしまうので、Webで受けれるのはラッキーです

・てんかん外科学会
2021年1月開催

・日本脳神経CI学会
2021年4月9-10日開催

・日本脳腫瘍病理学会
2020年8月5日開催
7月22日申し込み〆切

・小児脳神経外科学会
2020年7月4日開催
6月15日申し込み〆切

・脊髄外科学会
2020年11月8日開催


・脳神経外科生涯教育研修会
2020年6月20-21 日
申し込み受付中

2020年5月29日金曜日

Perimesencephalic Hemorrhageの定義

Perimesencephalic Hemorrhage: A Review of Epidemiology, Risk Factors, Presumed Cause, Clinical Course, and Outcome

Stroke. 2018;49:1363-1370.
DOI: 10.1161/ STROKEAHA.117.019843.

SAHの中でも静脈性のPerimesencephalic Hemorrhageについてのレビュー
定義を知らなかったので確認目的にと調べてみた
・ リスク因子はとくにない
・ 麻痺や水頭症は稀で、あっても一過性
・ 死亡例の報告はない
・ 経過がいいので症状が無ければ24時間後に退院しても良い(さすが米国)

日本であれば鎮静は不要だが2週間は入院してCT, MRIでくりかえし検査をしたいところ。一度は脳血管造影もみておきたい、といったところだろうか。
この定義に当てはまるのであれば、さすがに鎮静を2週間する理由はなさそうだ。

Perimesencephalic Hemorrhageの定義
Perimesencephalic Hemorrhageの定義
・ 発症72時間以内のCT
・ 血腫の中心は中脳、橋の前方で、シルビウス裂やinhemiの一部に出血が及んでもよい
・ 血腫はシルビウス裂の外側やinhemiを埋め尽くしたりしない
・ 側脳室後角や第4脳室に血腫が及ぶことがある

Perimesencephalic Hemorrhageではない症例
Perimesencephalic Hemorrhageではない症例
上段、下段ともにbasilar an. の症例
下段はシルビウス裂や側脳室後角に血腫を認める

2020年5月28日木曜日

グリブラ開頭術後のケモラジは5週以上空けた方が良い

Optimal Timing of Chemoradiotherapy After Surgical Resection of Glioblastoma: Stratification by Validated Prognostic Classification

DOI: 10.1002/cncr.32797
Cancer 2020

グリブラ開頭摘出術後の放射線化学療法の時期を検討した研究
結果、5週以上空けた方が良さそう
約3万人のグリブラ開頭患者の自立度(RPAⅢ〜Ⅴ)と放射線化学療法の時期と予後を検証
少しわかりにくいが同様に5週以上だと安定している
少しわかりにくいが同様に5週以上だと安定している

術後に予後が悪くなる理由に関しては、術後の低酸素や創傷治癒過程の血管障害が放射線感受性を低下させている可能性の指摘があるがよくわかっていないのが現状

後方視的研究なので、あくまで参考程度だが少なくとも焦って後療法をしなくてもよさそうだ。創部が治癒してからの開始が妥当なところだろうか

2020年5月27日水曜日

開頭時に髪を剃らなくても感染は増えない

Hair-sparing technique using absorbable intradermal barbed suture versus traditional closure methods in supratentorial craniotomies for tumor

Acta Neurochirurgica 2020/1/30
https://doi.org/10.1007/s00701-020-04239-3

開頭腫瘍摘出時に髪を切らずに吸収糸で縫う方法の後方視的比較研究
① 散髪してナイロンorステープラーで閉創
② 髪を切らずにナイロンorステープラーで閉創
③ 髪を切らずに吸収糸で皮下縫合
の3群で比較
髪はステープラーで固定しておく
髪はステープラーで固定しておく

吸収糸で縫合 傷は本当に目立たない
吸収糸で縫合 傷は本当に目立たない

感染に差はなし
感染に差はなし
最近学会などでも髪を残した手術の発表が多い気がする
カミソリは感染が増えることは周知されているが、バリカンが一番多いのではないか
術野に髪が入ると感染しそうな気にもなるが、実際には消毒もしているわけで感染が増えるわけではないのかもしれない
現実的には少しだけ剃ってステープラーというのが無難なところか
整容的な問題なので、RCTは出にくいだろうし、後方視的研究がbestなのだろうか

2020年5月26日火曜日

中大脳動脈のバリエーション

Neuroanatomy of the middle cerebral artery: implications for thrombectomy

J NeuroIntervent Surg 2020;0:1–7.
doi:10.1136/neurintsurg-2019-015782

SNSでなかなか話題になっていたMCAの解剖に関する論文
血栓回収を行う上で見えない血管を進むため、様々なバリエーションがあることを知っておくことが重要
LSAのバリエーション
LSAのバリエーション

副/二重MCA
副/二重MCA
GiboらによるMCAの栄養する皮質領域の分類
GiboらによるMCAの栄養する皮質領域の分類
血管内専門医を取得する上で知っておくべき情報なのでしょうか

2020年5月25日月曜日

脳血栓回収実施医

脳血栓回収実施医認定が始まりました!

http://jsnet.website/documents.php?id=738
血管内治療専門医のハードルが高いものの、日本中で血栓回収術を実施し、質の担保を行うという意味での実施医なのでしょう。

脳血栓回収実施医のお知らせ
脳血栓回収実施医のお知らせ

条件は以下

1.日本脳神経血管内治療学会の正会員であること
2.申請時に以下の資格を取得している者
 a) 日本脳神経外科学会・脳神経外科専門医
 b) 日本医学放射線学会・放射線専門医
 c) 日本救急医学会・救急科専門医
 d) 日本内科学会・認定内科医
3.200 症例以上の診断脳血管撮影を術者として担当
4.100 例以上の血管内治療症例を経験していること(20 例以上は術者)
 15 例は機械的血栓回収療法であること

審査料は1万円

若手は血管内専門医を取るでしょうし、
脳外科専門医をとってある程度年数は立っているが、血管内治療専門医はとるほどではない人などがよい対象なのでしょうか。
質の担保と共に資格の乱立はしょうがないのかもしれませんが、
資格の有無に関わらず医師は患者をよくしようと努力しているだろうし、
絶対に資格が必要なのか?とも思ってしまいます。

2020年5月24日日曜日

論文収集サイト

以前、こちらの記事でjournal watch系ブログとRSSリーダーのfeedlyの紹介を行いましたが、
その後、いくつか情報収集先を更新したのでまとめます。
現在はこんな感じです
脳神経外科系情報収集先
脳神経外科系情報収集先
海外のサイトでは
NeuroNews
神経系メディアです
NeuroNews
NeuroNews

Neurosurgery Blog
スペインの大学の文献ブログです。毎日更新されます
Neurosurgery Blog
Neurosurgery Blog



日本のサイトからは

Dr内野のおすすめ文献紹介
https://blog.goo.ne.jp/druchino?fm=rss
慈恵ICUDr.のICU系ブログです
Dr内野のおすすめ文献紹介
Dr内野のおすすめ文献紹介

silex
https://silex-transl.com/
文献和訳journal watchのサービスです
silex
silex


脳神経外科医から伝えたいこと
http://neuro-sah.com/
脳外科Dr.の血管障害を中心にした文献ブログです
脳神経外科医から伝えたいこと
脳神経外科医から伝えたいこと

脳卒中メモランダム
http://stroke-memorandum.blogspot.com/
神経内科Dr.のブログでしたが、更新は止まっているようです
脳卒中メモランダム
脳卒中メモランダム


川堀真人のホームページ
https://kawabori-neurosurgery.com/
再生医療の研究をしている北大脳外科Dr.です
川堀真人のホームページ
川堀真人のホームページ

2020年5月15日金曜日

下垂体腫瘍のレビュー 2020年

Pituitary-Tumor Endocrinopathies

N Engl J Med 2020;382:937-50.
DOI: 10.1056/NEJMra1810772

下垂体腺腫の2020年のレビュー

以下大まかな内容
・下垂体腺腫は頭蓋内腫瘍の15%を占める
・ホルモン産生腫瘍はACTH産生腫瘍、GH産生腫瘍、PL産生腫瘍、TSH産生腫瘍、ゴナドトロピン産生腫瘍に分けられる
・微小腺腫は10mm未満、マクロ腺腫は10mm以上で症状を伴うことが多い
・下垂体癌は非常に稀である、しかしテモダールは効く
・手術適応は10mm以上や症候性のもの
・術後10%は10年で再発する
・多発性内分泌腺腫1型やMcCune-Albright症候群で起きることがある

非分泌型腺腫

・10%が下垂体卒中を起こす
・手術で8割が改善する
・術後5年間で30%が再発するが、放射線治療の併用で再発率を13%にへらせる

プロラクチノーマ

・女性の下垂体腺腫の75%以上を閉める
・マイクロプロラクチノーマはほとんど成長しない
・ゴナドトロピンが抑制され無月経、不妊症、無精子症などをきたす

下垂体腫瘍原因別一覧
下垂体腫瘍原因別一覧

間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き (平成 30 年度改訂)

また、日本では日本内分泌学会から出ている治療方針があるので参照されたい
術後の薬物療法に関しては内分泌科にお願いしていることが多いのだろうか
プロラクチノーマに関しては脳外科で診ているかもしれないが

2020年5月14日木曜日

重症挿管患者は無鎮静でも良いかもしれない

Nonsedation or Light Sedation in Critically Ill, Mechanically Ventilated Patients

N Engl J Med 2020;382:1103-11.

これまで挿管患者は一時的にでも鎮静を切ることでICU滞在時間の短縮が示されて来たが、死亡率に差が出るかは明らかにされていなかった
無鎮静 vs. 日中offを伴う軽度鎮静 を比較した710人の多施設RCT
結果、90日死亡率を中心に、人工呼吸の時間、ICU滞在の長さ、入院期間に差はなし

重症挿管患者は無鎮静でも良いかもしれない研究のRASS
重症対象のため、無鎮静でもRASS低い
そして、鎮静群と比較してそれほど差がない

重症挿管患者の鎮静研究における死亡率
若干鎮静群の死亡率が低いが優位差なし

今回の研究では、群間でRASSの程度にそれほど差が出なかったことや、重症を対象にしているためにそもそもの死亡率が高かったことが研究結果に差が出なかったことに影響しているとも考えられる。
今回の研究では脳外科疾患に限っていないが、脳外科ではやはり覚醒度を見たいので、無鎮静で経過を見ている施設は多いのではないか。
むしろ軽度鎮静が必要なくらい元気な患者は"重症"といっていいのだろうか。

経口挿管だと咽頭痛があるから軽度鎮静が必要だとか、経鼻挿管だと咽頭痛がないから無鎮静がいいだとか、経鼻挿管だと誤って抜ける医療事故が起きているから経口挿管がいいだとか、色々な話が言われているが、正直どれも十分なエビデンスはない。
ただし、今回の研究によって無鎮静だからといって予後を悪くするわけではないということは言える
挿管方法は責任を持つ医師の経験に合わせて選択すれば良いのではないかと思う。

2020年5月13日水曜日

無料医学論文ダウンロードサイト

世の中には無料で医学論文をダウンロードするサイトがあるようだ
高騰する雑誌購読料に対抗して作られたらしい
https://sci-hub.tw/
https://sci-hub.tw/

2015年の半年間のログデータからは日本からも23万件のアクセスがあったようだ
学術論文違法共有サイトへの日本からのアクセス状況
 学術論文違法共有サイトへの日本からのアクセス状況
―Sci-Hub の公開ログ・データを元にして―
 日本の大きな医療機関では大半の論文がダウンロードできるように契約しているはずなので、それほど困ることはない。
中国、インドなどの途上国ではまだまだ雑誌購読料を払うだけの余剰はないだろう。
科学が進む背景にはこうしたサイトの影響もあるのかもしれない

2020年5月12日火曜日

Isolated sinusによるdAVFに対する小開頭直接穿刺によるDirect Sinus Packingの報告

Direct packing of the isolated sinus in patients with dural arteriovenous fistulas of the transverse–sigmoid sinus

J Neurosurg 88:449–456, 1998

Isolated sinusによるdAVFに対する小開頭直接穿刺によるDirect Sinus Packingの報告
Direct Sinus Packingでpubmedで検索してもあまり出て来ず、もしかしたら検索キーワードが悪いのかもしれない。教科書的にも引用文献は見当たらなかった。
1998年に行われた8症例の報告。

8症例のDirect Sinus Packing
8症例のDirect Sinus Packing

・5症例は事前に経動脈塞栓術で前処理(isolated sinus)
 isolatedされていたためにTVEが困難で、しかし全身麻酔も行っているためにコスト回収のために一部TAEが行われたのかもしれない
・Xpで穿頭位置を確認し、皮膚切開は直線的に5 cm
・sinusの直接穿刺によりマイクロカテーテルを留置
・コイルを詰めた後、サージセルで残りのdead spaseを埋めた

実際のシースやシースの置き方が気になる
教科書的にはシースごと皮膚を貫き縫合することでシースの抜去を防ぐと書いてあった
マイクロカテやコイルは何でもよいのだろう
一度は見ておきたい手術法である

2020年5月11日月曜日

イーロンマスクの論文

An integrated brain-machine interface platform with thousands of channels

Elon Musk & Neuralink
doi: https://doi.org/10.1101/703801

随分前のものになってしまったが、一時期話題となったイーロンマスクの(査読のない)論文を読んでみた
イーロンマスとニューラリンクが開発した脳埋め込み型のブレインマシンインターフェースについての内容
皮膚表面から検出するEEG, MRI, MEGは精度が低く、脳の電気活動を知るには脳への直接穿刺が望ましい
一般的には侵襲が大きいが、新たな技術で乗り越えようとしている
以下4つの技術開発を行っているとのこと。すごい

1. 極小電極の開発
2. 埋め込みロボットの開発
3. 膨大な情報統合システムの開発
4. 集めたデータの解釈システムの開発

埋め込みロボットは脳血管を認識して避けるようだ。
極小電極埋め込みロボット
極小電極埋め込みロボット
極小電極の埋め込みの様子
極小電極の埋め込みの様子

電極を埋め込まれたラット
電極を埋め込まれたラット
論文の内容としては工学的な内容がほとんどで医学的内容はまだない
デバイスが開発されたら自ずとBMIに関する医学的見地は高まっていくということなのだろうか

開頭だけであれば脳外科医が日常的にやっており、比較的危険性は少ないが、
脳に電極を刺すというのはいくら極小であっても侵襲性が高い印象である
血管損傷による脳梗塞、てんかん発作、感染などのリスクは致命的になりうる

高次脳機能自体はEEGでも十分にわかっていない領域であり、
現状すぐに役立つとすれば運動野・感覚野の領域だろうか
(一般的に知られているほど、脳と機能が直結している領域は驚くほど小さいのである)
健常者を対象にすればリスクの可能性があるし、患者を対象にしたとしても機能を失った脳細胞は緩徐に消失していくわけだから発症直後に行うということなのだろうか

否定の材料は驚くほどに出てくるが、それを乗り越えてこその新技術なのだろう
あらゆる壁を乗り越えて実用化まで進んで欲しい

2020年5月10日日曜日

血栓回収術時にtPAはSkipすべきか否か-中国のRCT-

Endovascular Thrombectomy with or without Intravenous Alteplase in Acute Stroke

N Engl J Med. 2020 May 6.

日本より先に出てしまいました。EVT without tPAの中国のRCT。DIRECT-MT研究
日本の方が先に国際学会に発表していたので、てっきり先に論文が出るものかと思っていましたが、コロナの影響で中国からの渡航ができなかっただけなのかもしれません。
一番でなければ一流誌には掲載されないでしょうし、こうしてだんだん国際競争力を失っていくのでしょうか。

MT vs. MT + tPAの多施設RCT
300名ごとの2群比較
患者背景に大きな差はなし
結果は、3ヶ月後mRSに差なし。出血性合併症にも差なし。

DIRECT-MT研究の結果:非劣勢
DIRECT-MT研究の結果:非劣勢

DIRECT-MT研究の副作用結果:非劣勢
DIRECT-MT研究の副作用結果:非劣勢
再開通率は若干tPA群に多いが、当然出血性合併症も多い
3ヶ月後mRSで差がなけれtPAはスキップしても良いかもしれないという研究結果となる
例えば、tPA投与条件に会うが出血リスクが高いと考えられる症例や、ICどん詰まりでガイディングカテからの吸引ですぐに血栓回収できそうな症例などである
根拠のある線引きは難しく、ケースバイケースに判断するほかない

SKIP studyのプレゼン資料
SKIP studyのプレゼン資料
https://www.professional.heart.org/idc/groups/ahamah-public/@wcm/@sop/@scon/documents/downloadable/ucm_505635.pdf
ISCで行われた SKIP studyのプレゼンスライドは何と!ISC2020のホームページからダウンロードできる
学会に行かずとも最新の情報を共有していく海外の姿勢が素晴らしい

日本も学会のプレゼンを残していったらいいのに
逆に言えば記録に残るほどしっかり資料を作り込まなければ作る意味も参加する意味もないのに

2020年5月9日土曜日

HITTは本当に意味があるか

脳挫傷を伴う急性硬膜下血腫の治療 -極小開頭・血腫洗浄除去療法の再評価-

日救急医会誌 1994; 5: 15-25

ASDHの開頭術に前だって、穿頭をおく手術をHITTと呼び、ガイドラインにも書いてある
皆が知っているので国際標準なのかと思いきやHematoma irrigation with trephination therapy, HITTはもともと東大の有賀先生により発表され、pubmedでも数件しか表示されない
所感としてはHITTを行ったところで予後改善しにくい印象であり、データでは実際のところどうなっているか調べてみた
HITT療法
HITT療法
ASDH120例に対する単施設後方視的研究
開頭 w/ HITT vs. 開頭の比較
結果としては有意差なし
HITT群と開頭群の比較
HITT群と開頭群の比較
また、頭部外傷データバンク576例中、穿頭が行われたASDH 90例の解析では、穿頭だけ行っている症例が53例もあった
死亡率も高く、穿頭だけしたところで開頭まで持ち込めなかった例なのだろうか
頭部外傷データバンクでのHITTの実際
頭部外傷データバンクでのHITTの実際

HITT自体による予後改善のエビデンスはない
CSDH成分が多いのであれば穿頭で十分かもしれないが、硬い血腫成分を穿頭で十分に除去できるとは思えないし、手術室についてからHITTする意味もない

HITTを行う条件として考えられるのは、
すぐに手術室に入れない状況下で、CSDHの成分が多い場合、もしくはあらゆる手段で救命すべき患者に限られるのではないか。
そうでなければ、HITTは術者の焦る気持ちを和らげる意味合いしかならないのかもしれない

2020年5月8日金曜日

テルモのフローダイバーター「FRED」

SAFE study (Safety and efficacy Analysis of FRED Embolic device in aneurysm treatment): 1-year clinical and anatomical results 

J NeuroIntervent Surg 2019;11:184–189. 

n=100の経過評価
1年間の累積死亡率は1.9%、合併症率2.9%
1年後の完全閉塞は73.3%、頸部残存が7.8%、動脈瘤残存が18.9%

FREDに対する抗凝固薬の導入:半年くらいはSAPTを継続している
抗凝固薬の導入:半年くらいはSAPTを継続している
FREDにより動脈瘤は消失
FREDにより動脈瘤は消失
新規デバイスの初期成績は、世界でももっとも症例数をこなしているであろう施設・術者が選択されるし、症例も制限されている。
そのため、実臨床ではより悪い結果がでる可能性がある。
こうした成績はあくまで機器承認のためのものと割り切った方が良さそうだ。

2020年5月7日木曜日

脳動脈瘤治療用の袋状塞栓デバイス「WEB」のエビデンス

Safety and efficacy of aneurysm treatment with WEB in the cumulative population of three prospective, multicenter series

J NeuroIntervent Surg 2018;10:556–562.

日本での販売が開始した脳動脈瘤治療用の袋状塞栓デバイス「WEB」
そのエビデンスを調べてみた
脳動脈瘤治療用の袋状塞栓デバイス「WEB」
脳動脈瘤治療用の袋状塞栓デバイス「WEB」
https://www.terumo.co.jp/pressrelease/detail/20190108/497/index.html

WeBcasT (WeB clinical assessment of intrasaccular aneurysm), French Observatory, and WeBcasT-2の3つの前向き多施設共同研究結果を合わせた研究結果
169動脈瘤に対して治療が行われ、8.3%がSAH症例。
動脈瘤の大きさは2.8〜17.0mm(平均7.6±2.5mm)。4.3%がコイルも併用
手術/デバイス関連合併症は1.2%、1年の時点で20.9%で残存動脈瘤あり、6.9%で再治療が行われた。
WEBにおける抗凝固薬の導入率:SAPTで手術を行っている症例が3割
抗凝固薬の導入率:SAPTで手術を行っている症例が3割

WEB各試験で閉塞率に相違なし
各試験で閉塞率に相違なし

WEBのMCA閉塞症例
MCA閉塞症例
永続的塞栓性合併症は3%でやや多い程度
術中破裂も1.2%で比較的少ない
再治療率も低いが、これはコイルの結果と同様

所感としては、動脈瘤内でシースを展開する怖さを考えると
優位性がなければコイルでよいのではないかと思ってしまう。
一方で、ネックが十分にない症例などにはコイルよりは有用なのかもしれない。
まだ実物を見たことがないので、再度レビューしてみたい。

2020年5月6日水曜日

抗てんかん薬と抗COVID-19薬の薬物相互作用

抗てんかん薬と抗COVID-19薬の薬物相互作用一覧

がイタリアてんかん協会から出ていました
イタリアてんかん協会のホームページ
https://www.lice.it/LICE_ita/commissione_farmaco/commissione_farmaco.php

抗てんかん薬と抗COVID-19薬の薬物相互作用一覧
https://www.lice.it/pdf/Tabella_interazioni_Antiepilettici_in_COVID-19_30.03.pdf
有病率1%といわれるてんかんでは、当然コロナ感染者も出てくるでしょうし、
薬物相互作用の多い抗てんかん薬について神経系医師に相談がくるかもしれません。
この表を見ても、イーケプラは非常に使いやすい薬であることがわかります。

2020年5月5日火曜日

てんかんのある人における新型コロナウイルス感染症に関するQ&A

てんかんのある人における新型コロナウイルス感染症に関するQ&A
が、東北大学てんかん学分野から出されています。

基本的にてんかんとコロナの関係性に関する根拠のある情報はありませんが、
一般的な肺炎をきたしたときと同様、全身状態増悪による発作リスクは当然あると考えられます。
重要なのはコロナ治療時の薬物相互作用の多い抗てんかん薬
ですが、こちらは別で取り扱います。

日本てんかん協会からのお知らせ
日本てんかん協会からのお知らせ
https://www.jea-net.jp/news/7844
てんかんのある人における新型コロナウイルス感染症に関するQ&A
てんかんのある人における新型コロナウイルス感染症に関するQ&A
てんかんのある人における新型コロナウイルス感染症に関するQ&A
https://www.jea-net.jp/wp-content/uploads/2020/05/e36a1ffdd7d4e4db3fb3881519a23a45.pdf?fbclid=IwAR2U04sfLRUCLjsVZRXKyK-KHCWBuEtqwD7oN1GC-_zWwkweg16bQfIzjWQ
患者の不安も考えてこうしたQ&Aを出すのは電話相談を減らす意味でも非常に重要ですね。

2020年5月4日月曜日

REACT-71 大口径血栓吸引カテーテル

令和2年2月に認証を受け、Medotronicから0.071ichの血栓吸引カテーテルReactが発売されました。
REACT-71の寸法
.068と.071inchの2モデル
https://www.info.pmda.go.jp/ygo/pack/530366/30200BZX00056000_A_01_01/
基本的には初代のAce60, 68などと同じ使用方法のため、
・ICなど近位部主幹動脈の塞栓
・硬そうな塞栓
などの際には有用と考えられます

MedtronicからはポンプとしてRiptideが発売されていますが、
非公式的には他のポンプでも代用可能です。
Riptideアスピレーションユニット
Riptideアスピレーションユニット
ただし、他社ポンプ+Reactのみの算定ではキャニスタ(血液を溜める所)のコストが取れないので注意が必要です!
メーカーとしてはポンプも合わせて使ってくださいということです。

他社ポンプ(主にPenambra)を使用している病院は多いと思うので、
キャニスタを洗浄して使い回すのが現状の逃げ道のようです。
患者に影響の出る部分ではありませんが、血液での汚染を繰り返すので感染対策に関しては自己責任が必要です。

2020年5月3日日曜日

リアル"サイボーグ"論文

Self-Contained Neuromusculoskeletal Arm Prostheses.Arm Prostheses

N Engl J Med. 2020 Apr 30;382(18):1732-1738.

ロボット義手の症例報告
正式には"上腕切断後の4名の感覚コンポーネントと運動コンポーネントの両方を備えた骨固定式自己完結型ロボットアームの使用について報告"
動画が衝撃的なので、ぜひ見て頂きたい!(NEJMの会員登録が必要)

ロボット義手の図解
ロボット義手の図解
日常生活から仕事まで義手を使えている
日常生活から仕事まで義手を使えている
フルタイムで働いている人もいるという。
仕事を続けれるとは、需要が小さくとも社会的インパクトが非常に大きい。
健常者に対しても自己拡張型ツールとしても可能性を秘めているのではないかとも思える。