Outcomes of Argatroban Treatment in Patients With Atherothrombotic Stroke
Observational Nationwide Study in Japan
Stroke. 2016;47:471-476.
アテローム血栓性脳梗塞に対しては日本ではアルガトロバンが使用されることが多い。
脳卒中ガイドライン上ももちろん推奨されているが、実際に転帰を改善するかは調べられていなかった。
今回の研究は日本の約2万人のデータを扱い、アルガトロバン使用群 vs. 不使用群の傾向スコアマッチングを行なった後方視的研究。
結果、アルガトロバンは退院時mRSも改善しないし、出血もおこさないという衝撃の結果であった。
これって意味あるのか?
脳卒中ガイドラインでのアルガトロバンの推奨 |
ガイドラインに記載されているRCTは1992年のstudy
Effect of the thrombin inhibitor argatroban in acute cerebral thrombosis.
Semin Thromb Hemost. 1997;23(6):531-4.
時代的背景もあるが、メインアウトカムでmRSの比較が行われているわけではない
アルガトロバンは退院時mRSを改善しない
今回は、傾向スコアマッチングにより各群2289人に調整されている。
退院時のmRSは不変(adjusted odds ratio, 1.01; 95% CI, 0.88–1.16)アルガトロバンに効果はない |
そもそもアテローム血栓性脳梗塞に対する抗凝固薬のエビデンスが存在しない
思い返してみればATBIに抗凝固薬は使わないし、
コクランでも否定されている。
当然欧米での推奨はない
Anticoagulants for acute ischaemic stroke
Cochrane Systematic Review
Cochrane Database Syst Rev. 2015 Mar; 2015(3): CD000024.
死亡率に有意差なし |
慣習的に使われている怖さ
日本の神経系医師のどれほどがこの論文を知って治療しているのだろうか
今回の研究結果は、使用しないほうが良いというエビデンスではない。
ただし、使っても対して予後を改善しないものを、いつも使っているから使うというのはただただ医療費を無駄遣いするだけなのではないか。
エダラボンもそうだが、本当に効果がある薬はやはり海外でも使われているだろう。
そして、日本でしか使われていない薬というのは、エビデンス含めよく吟味する必要がある。
アテローム血栓性脳梗塞にはやはりアスピリンやクロピドグレルがBest treatmentなのだろう。
ガイドラインでの推奨とはいえ抜け穴が多くある。
原著にあたり、どの程度根拠のある治療か検討することはやはり重要だ。